USAID(米国国際開発庁)とは?突然の大転換の経緯

2025年に入り、米国国際開発庁(USAID)が大きく揺れています。トランプ大統領は就任直後にUSAIDを事実上解体する方針を打ち出し、ウェブサイトの閉鎖や大量解雇も実施されました。さらに対外援助の全プログラムを90日間停止する大統領令が発効し、世界各地の援助現場が混乱に陥っています。USAIDを批判する声も強く、エロン・マスク氏は「犯罪組織」とまで断じていますが、具体的な汚職の証拠は十分示されていないようです。

巨大な資金と揺れる支援現場

USAIDは米国の対外援助の約6割を担い、2023年度は約437億ドルを拠出しました。特にウクライナ(約160億ドル)への支援規模が際立ちます。一方で援助現場では食糧横流しや不正転売などの腐敗リスクも指摘されています。エチオピア北部では大規模な食糧の盗難が明るみに出て、緊急支援が一時停止に追い込まれた例もあります。こうした課題を理由に、トランプ政権はUSAIDの解体を推し進めていますが、議会は慎重姿勢で超党派の抵抗も根強いです。

人道援助への影響

USAIDは保健や食糧支援など、途上国にとって生命線となるプロジェクトを多数手がけてきました。たとえばHIV/AIDS対策のPEPFARや、紛争地域への食糧支援は多くの命を救っています。しかし援助停止命令の余波で、ケニアやナイジェリアなどの医療体制が揺らぎ、患者が薬を得られなくなる懸念も生まれています。

国際関係と今後の見通し

米国の援助縮小は「中国やロシアが影響力を拡大する隙を与える」との指摘があり、国際社会からは「人道危機が深刻化する」という声も上がっています。今後、トランプ政権の方針が議会とどう折り合うかが焦点になりそうです。支援現場で成果を上げてきたUSAIDの行方は、グローバルな地政学のバランスにも大きく関わってくるでしょう。